「終活、はじめました」
こう書くと、ちょっと重く聞こえるかもしれない。でも僕の場合、きっかけは驚くほど軽かった。AIとの雑談の中で、ふと言われた一言だったのだ。
「もしものとき、ご家族はこの環境、把握できていますか?」
その瞬間、手が止まった。
自分の「持ち物」を数えてみて気づいたこと #
考えてみてほしい。今の自分が急にいなくなったとして、家族はどこまで困らずに済むだろうか。
銀行口座や保険証券なら、市販のエンディングノートに書式が用意されている。でも僕の場合、それだけでは全然足りないことに気づいた。
自宅サーバー、Obsidianの巨大なVault、このブログ、いくつかのドメイン、日常的に使っているAI環境。ここ数年のうちに、気づけば普通の人よりだいぶ複雑な「デジタルの持ち物」を抱え込んでいた。
サーバーの管理画面のURLひとつとっても、家族からすれば「何かの暗号」にしか見えないだろう。ブログが収益化されていることも、ドメインが毎年自動更新されていることも、家族は誰も知らない。
これはまずいな、と思った。

一般的な「エンディングノート」との相性の悪さ #
書店に並んでいるエンディングノートを何冊か眺めてみた。どれもよくできている。ただ、想定されている「持ち物」が、僕の実態とかなりズレていた。
- 「重要書類の保管場所」→ 紙の書類はほとんどない。大半がパスワードマネージャーの中
- 「デジタル遺品」の欄 → SNSアカウント1〜2個分のスペースしかない
- 「思い出の品」→ 物理的なモノより、Obsidianに溜め込んだ何千枚ものメモの方が量が多い
既存のフォーマットに無理やり当てはめようとするほど、書きにくさが増していく。これは自分で設計した方が早い、と腹をくくった。
とはいえ、市販のノートを土台に使うのは悪くない選択だと思っている。項目を自分用に上書きしていけばいいだけなので、ゼロから作るよりだいぶ楽だった。
コクヨ もしもの時に役立つノート
「エンディングノート」から「家庭運営マニュアル」へ #
発想を変えることにした。
これは「死んだ後のための書類」ではなく、「もし自分が急にいなくなっても、家族が普段の生活で困らないための引き継ぎ資料」だと考え直した。名付けるなら「家庭運営マニュアル+人生アーカイブ」がしっくりくる。
そのうえで、情報を3つの層に分けることにした。

レベル1:家族が最初に見るもの A4で2〜3枚。あえて紙で残す。デジタルだけだと、そもそも家族がそこにたどり着けない可能性があるからだ。最初に連絡すべき相手、保険会社、スマホの場所、そして「この先の詳しい情報はここにある」という道しるべだけを書く。
この数枚をどこにしまうかも地味に大事で、結局クリアファイルにまとめて分かりやすい場所に置くことにした。
コクヨ クリアブック A4 差し替え式
レベル2:エンディングノート 銀行・保険・年金・クレジットカード・サブスク・ドメインなど。ただしパスワードの実体は書かない。パスワード管理ツールの「金庫の場所」だけを書いておけば、あとは家族がそこにアクセスすればいい。
サブスクやドメインは特に大事だと思っている。放っておくと、死後もずっと自動課金され続けるものが結構ある。「これは誰が、いつ解約すべきか」まで書いておくつもりだ。
レベル3:家庭システム運用マニュアル 自宅サーバー、Obsidian、ブログ、AI環境について。専門的な手順書ではなく、「これは何のためのものか」を家族向けの言葉で書く。サーバーは「触らなくていい」と一言添えるだけでも、家族の不安はだいぶ減るはずだ。
今の心境 #
正直、着手したばかりでまだ埋まっていない項目の方が多い。それでいいと思っている。
無理に一気に全部埋めようとすると、たぶん途中で挫折する。だから今は、決まったタイミングで少しずつ更新していくくらいの温度感でやっている。
歳を重ねると、こういうことを考える機会が自然と増えてくるのかもしれない。ただ今回に関して言えば、きっかけをくれたのは自分の年齢というより、AIとの何気ないやり取りだった。ちょっと不思議な話だと思う。
